スカッドは戦略兵器かどうか

テポドンの発射準備からこっち、2ちゃんねる軍事板・質問スレで何回か(←1回かもしれないけどまあいい)見たのだけれど、「スカッドミサイルがそんなに古い兵器*1なら、どうしてアメリカは迎撃手段をもっと早くから開発してなかったんですか?」という質問をする人がいる。回答者が「そら君、いざ戦争って時にはメガトン級の核弾頭で全力のパイ投げをするんだから、そんなときに1トンの通常弾頭とか、50キロトンの戦術核とかを積んだミサイルを気にして何の得がある?」なんて回答すると、質問者は「はあ、そういうもんすか」となにか腑に落ちないような歯切れの悪さとともに自分の板に帰っていく。
きっと質問者は冷戦を知らないかなり若い人なんじゃなかろうか、などと、MiG-25函館着陸もリアルタイムで知らないくせに思ってしまうわけですが、いや、いま振り返って考えると冷戦期の東西の兵力配備は異常だなあと思う。
湾岸戦争からこっち、瀬戸際国家の最後っ屁的戦略兵器に位置づけられているスカッド系列のミサイルですが、ソ連軍の編成では戦略ロケット軍ではなくて陸軍の兵器なんだよね。確か戦域軍レベル以下で使用されるはずで、航空阻止にやってくる敵機の飛行場とか、敵の第2梯団の策源地を攻撃するような兵器だったと思う。つまり純然たる戦術兵器で、ミサイル版Su-24と言ったところではないだろうか。
当然過去の戦争でも散々使われていて、3次と4次の中東戦争でそれぞれ数発、イラン・イラク戦争中に両陣営から数百発ずつ、アフガン紛争では2000発のオーダーでソ連軍によって使用されたという。
そこへ持ってきて、7発でこの様ですよ。とか思わないでもない。まあ、豊かになればなるほど失うものが多くなるから、許容される損害の閾値がどんどん低くなっているのは分かるけれど。1トンの通常弾頭の爆発(しかも爆発エネルギーの逃げやすい上からの攻撃)で出る被害なんて、95年にオクラホマシティー連邦政府合同庁舎ビル爆破より小さいはず*2。まあ核か化学兵器は怖いですけど、今までの実験の失敗っぷりやCEP(半数命中界)を勘案すると、どこに落ちるかわかんないから、「撃ってきて当たるかどうかは運ですよ」といえてしまうような気がする。

まあそれでこれだけの反応を引き出してるんだから、北にしてみれば鋭意、というか積年の開発の甲斐はあったっちゅう感じなんでしょうか。

*1:原型はナチスドイツのA-4(V2号)

*2:この事件で使われた爆薬は2トンを越える。なお破壊力は、火薬量の3乗根に比例(同種の火薬で同条件の爆発の場合)