大阪城

中学のころ、夢中になって司馬遼太郎を読んでいた時期があった。高校に入ったくらいで一度熱は醒め(学校の図書館にあるのを読み尽くしたからだと思う)、それからあまり手に取らずに来たのだけれど、最近になって読み残したものをまた手に取り始めた。二十代も半ばを過ぎてから読んでみると、司馬の大阪人らしいところというのが感じ取れる。『城塞』でも、豊臣家、というか豪奢でまだまだ世が乱れていた安土桃山時代への憧れと、太平だが少し鬱屈がある江戸時代とそれをもたらした徳川家への評価と反発が入り混じっている。徳川家康をどう描くか一貫していなくて、老練/悪辣/武将/政治家/家長という側面が、あまりうまく混交せずに投げ出されている。また、豊家の人々に対する歯がゆさも随所に感じられ、そのどたばたの描写に引きずられてか戦闘シーンも妙にすっきりしない。『おれは権現』あたりに収録された短編ではテンポよく戦闘が展開し、人が死んでいってもっと歯切れのいい作品になっているのに。とはいえ、司馬史観たっぷりでさすが国民的大作家の作と思わせるほど読ませる作品です。分厚いけど

城塞 (上巻) (新潮文庫)

城塞 (上巻) (新潮文庫)

おれは権現 (講談社文庫)

おれは権現 (講談社文庫)