GUNSLINGER GIRL 5(相田裕/ISBN:4840230722)

買って読みました。一応ネタバレに配慮して、以下は「続きを読む」に隠します。

陰惨な巻でした。のっけからアンジェリカの残り少ない時間が話題にされ、トリエラはなんだかキルスコアを生きる縁にした初期のヘンリエッタのように、ピノッキオを倒すことにこだわる。マルコーはすでにモチベーションを失っており、ヒルシャーはトリエラにたいしてイニシアチブを発揮できない。現状の義体運用の行き詰まりが浮き彫りにされている。バッドエンド(だけどトゥルーエンド)に向けてきれいに補助線が引かれているように思いました。五共和国派側は三人組を中心に、それぞれテロに参画する理由がそこそこ掘り下げられており、物語の展開が上手く行っていると思う。
ただ逆に、よくよく考えてみると社会福祉公社側に強力な「治安維持」の動機を持ったキャラクターというのはほとんどいない。ジョゼだけなんではないだろうか。そのジョゼだって半ば以上復讐心からのようで、なんというか国家の暴力機関としてはそれでもつんかいなという気になる。「パスタの国の王子様」あたりでは、『攻殻機動隊』の公安9課的な共同態的精神が見られるんだけれど、1課と2課の様子を見ると、すでにそういうサイズの組織ではなくなっているように思える。なんでみんなテロにテロで報復しないで、国家側でカウンターテロする側に立つようになったのか。「なんで反五共和国派」といういことと「なぜ公社を選んだのか」ということを弁別できるくらいキャラの奥行きがないと「義体を使う」というテーマが消化不良になりそうな予感がある。プリシッラちゃんだけ普通の人ですね、じゃあ切なすぎる。
そういえば、キーワードからつらつら見ていると、だいたい「義体」かわいそう、大人(=読者)の位相ずるくて辛い、みたいな話が多くて、「五共和国派はテロリストなので彼らが悪いのが大前提」という意見は見当たらなかった。ま、無粋だもんな、このブッシュ・ドクトリン的な読みは。でも誰か教条的にいっとくべきなんじゃないかとも思う。
それはそれとして、義体の女の子の「小さな幸せ」というのは「誉めてくれる主体」がいるということだと思うんですが、深井雫や首都警特機隊と比して考えると、相当大きな幸せなんじゃないかと思いました。あとCIAと比べてもな!(ケネディフラテッロかっていう)

「諸君らの活躍が認知され賞賛されることはない。だが失敗は糾弾される。」

GUNSLINGER GIRL 5 (電撃コミックス)

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