人が皇帝になり得た残照『皇帝のいない八月』
2月下旬、インターネット界隈で『機動警察パトレイバー劇場版2』の劇中時間実況をしている人を見かけ、ふと、日本を舞台にしたクーデターものって映画でなにがあったっけと思い見返すことにしたのが『皇帝のいない八月』。
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Amazonの作品紹介だと「ブルートレインさくら号に乗り込んだ憂国の自衛官たちは密かにクーデターを計画しており」みたいな、「さくら」を中心としたサスペンスのように描かれているんですが、
「保守与党の政権運営が混迷を極め、革新勢力の伸張が予想される中、自衛隊の一部勢力がクーデターによる救国内閣の成立を計画。これを察知した内閣情報調査室と自衛隊警務隊の高官がクーデター阻止に奔走するが、その一方で保守党側にもクーデターに呼応する動きがあり……」
くらいの割と大きな構図における群像劇と言ったほうが適切だと思います。
錚々たる俳優陣の演じる各キャラクターにはしっかりとした存在感があるのですが、中でも渡瀬恒彦演じる藤崎の非常にチャーミングで独善的な青年将校ぶり、太地喜和子の演じるフィクサーの愛人兼銀座のバーのママというちょっと手垢つきすぎて21世紀には登場させにくキャラのあだっぽさは印象が強かったです。また、クーデター鎮圧の指揮を執る内閣調査室長・利倉を『日本のいちばん長い日』ではクーデター計画の中心人物の一人だった井田中佐を演じていた高橋悦史が演じているのは期せざる皮肉という感じを受けました。
「自衛隊によるクーデターがある程度リアリティがあったのはこの作品公開くらい*1まで」というのは本作の感想としてたまに語られるのを見かけますが、もう一つ時代性を強く感じるのがこの「内閣調査室」という組織がものすごい「力」*2を持っている点です。これは当時の人達にとって「情報機関」と言うものが、フィクションの中では特に、そして実際の世界でもそれなりにものすごい力を持った存在だと考えられていたことの反映でしょう。このような「情報機関」像はこの20年位の冷戦期研究や情報公開によって最近ではかなり変容しているといえると思います。このような時代性も含めて非常に楽しめる映画でした。
「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」
「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」というクラウゼヴィッツの言葉を拳拳服膺していることの多い軍オタが、「軍事的合理性」というものが政治から自由であると考えがちであることについて、意識的でありたいなと思う晴れた日曜の昼。
逆ベクトル
「ソーシャルブックマークは禁止です!当然のネットマナー!!」勢と「正義なので裏取りせずに情報拡散させまくりです!!」勢が対消滅すればオープンを前提としたインターネット界隈のノイズ成分がそれなりに除去されるのではと思ったが、そういうノイズにこそ感情慰撫装置としてのインターネッツの役割があるのかもしれないなーと思ってなんだかな。
ある種のポルノ規制とか
飲酒運転撲滅とか一気飲み事故防止ってやつは、「飲酒」を悪とするのではなく、「飲酒」のあり方についての規制だから、世間にスムーズにコンセンサスが作られて行った気はする。