イタリア軍は逆ポジティブなんだと考えてみた

ちょっと昔の話。今よりも僕はずっとずっと言い訳をするのが好きで、理屈を説明するのが好きだったんです。

でまぁ、当時も今と変わらず補給がなくて、
男友達と飲みながら「補給がない、だから作戦行動できないんだ」と文句言ってたのです。
北アフリカで。


したらまた、この友達が「じゃあ、わかった」と言うのです。「今からイギリス軍に降伏しに行こう」と。
降伏なんかしたことないオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。
でも友達は、少し遠くで飲んでいるイギリスの第7機甲師団と第8機甲師団を指さし、「あそこ行って白旗掲げようぜ」と言い、テーブルクロスを引き抜き始めます。

オレは「いや、向こうも迷惑だし」とか「さすがにうざいっしょ」とか言って止めます。
友達は「嫌がられたらすぐ武装解除すればいいんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをあきらめました。


「じゃあ、英軍じゃなくて、アルジェリアから上陸してくる米軍に降伏するか?」と友達は言います。
「逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。
「でも補給がないんだろ? だったら降伏するしかないだろ」
「そうだけど、もっと普通に戦争したいっていうか」とオレ。
「なに、普通って?」
「遅滞防御とか、強固な防衛線作って立て籠もるとか、そういう…」とハッキリ言えない自分。
「じゃあ、オレが今から反ドイツ政府作って、それでお前に宣戦布告をしたらいいか? それも立派な降伏の理由だよな」
「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。降伏すると不名誉な扱いが多いとか」
「は?」
「その…」
「…不名誉じゃねぇよ。軍務から解放されるんだよ」
「あ、そうだったね。…でもオレ、娑婆での生活、少し苦手だし。そこまでして降伏したいってわけでもないし…」


友達はオレの顔をじっと見つめながら、一言、
「だせぇ」
と言いました。


ごちゃごちゃ言ってるけど、勇気がないだけじゃん


彼は言います。
言い訳をして、さも「こういう事情なんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、
勇気がない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。
白旗掲げる勇気もないやつが、戦争とか言うんじゃない。


どうせ第一次世界大戦に行けば「国内の反戦勢力の策謀が…」って言うし、
モンテカッシノに連れて行けば「ああいう場のノリは苦手だし、そういうところに来る国には虐待されそう」とか言うだろうし、
空軍で補給なんて持たせられないぞって言えば「いや、総統から死守命令が出てるし」って何かにつけて言い訳するんだろ?
だったら「自分には敵に降伏する勇気がないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。
そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、
つーか、できない理由並べて、今の自分を否定させずに、わかってもらおうとするその魂胆がだせぇ、と。


あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。
その場は言い訳もできず笑ってごまかしたけど、フカに帰ったら彼の顔とセリフが思い浮かんで、
司令部天幕の中で「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。
オレにはオレの事情があるんだ、欧州に第2戦線を作らせるわけには行かないし、しょうがねぇじゃんかよって。ゲッペルスの宣伝放送聞きながら(笑)



ひとしきり考えたら、そんな自分を「だせぇ」って思った。



※当然もとネタは

「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる太平洋戦争 - ARTIFACT@ハテナ系
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20080414/startpacificwar