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ちょっと海のほうを補足したい

[軍]ミリヲタ入門 第六回 時代による戦術の変化 - ぴこていこく (2008-01-14)
http://www11.big.or.jp/~kkk/pico/?date=20080114#p01

という記事が人気を集めているようなので、そこでさらっと触れられている海のほうをちょっと細かくかいてみた。

一番エライ船の移り変わりで見る海軍150年くらいの流れ

18世紀前半、ナポレオン戦争までは帆走軍艦の究極形ガレオン船の時代。100m切るような至近距離で艦の横にずらりと並んだ大砲をぶっ放す。戦列艦と呼ばれるたくさん大砲を積んだ船がこのころの主力艦。ただし当時の火薬のつまっていない砲弾による砲撃だけで敵艦を制圧できることは稀だったため、切り込みが多用された。イメージは『パイレーツオブカリビアン』。ただし、あの映画より乗組員が10倍くらいいる。大型船だと500名ほどは乗り組んでいた。
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18世紀半ば、軍艦に蒸気動力と装甲が装備されるようになる。クリミヤ戦争で蒸気船を活用したロシア艦隊が帆走軍艦主体のトルコ海軍をフルボッコにしたため、蒸気船の優位が明確になる。同じころ南北戦争では、重装甲の艦を大砲で沈めるのは一日がかりの仕事であることを示す海戦が起こった(ハンプトン・ローズ海戦 - Wikipedia)。
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装甲の進化のほうが砲の進化よりも急だったたため、「砲は装甲に勝てないんじゃね?」と考えた一派が、古代ギリシア時代の発想を基に船種に衝角をを装備させ、体当たりで艦を沈める方式を復活させる。リッサ沖海戦(1866)や南米のほうの太平洋戦争(1879)では一定の成果を上げる。
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しかし、砲および機関も徐々に発達、他艦に体当たりされないような軽快な運動性を持った船が増え衝角戦術は無効に(日清戦争・1894)、砲が頑張れば装甲艦の戦闘力を短時間で奪うことが可能(日本海海戦・1905)になったことがはっきりした。
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これらの戦訓から、砲を頑張らせるために、副武装は減らして、なるべく大きな砲をなるべくたくさん積む、という発想が出現し*1ドレッドノート級として結実した(1906)。以降、でかい砲と分厚い装甲を持った戦艦がエライという大艦巨砲主義といわれる状況が40年ほど続いた。この間、(極端にいえば)基本的に海軍のすべては戦艦を十全な状況で戦闘させるために奉仕する存在であった。程なくして潜水艦や航空機が本格的に戦争に投入されるようになるが、やっぱり同じ。
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第二次世界大戦が始まる頃には、航空機がかなり進化。航行中の戦艦を撃沈するにはちょっと苦労するが、停泊中の戦艦を奇襲してフルボッコに出来るくらいになっていた。なにより戦艦の砲の射程がせいぜい40kmのところ、400km向こうから敵を攻撃できる*2ところが買われ徐々に航空機とその母艦である空母が海軍の主力になる。まあ、戦艦もあまりにもでかくなり過ぎつつあったという部分も。馬鹿でかくてたくさんの人が乗り込んでいて建造にお金と時間がかかる戦艦よりも、航空機の集団のほうがはるかに使いやすい。
なお、この時期の軍用機の進化は異常で、開戦時、2人乗り艦載爆撃機の搭載量は250kgだったが、終戦時に運用されていた機の搭載量は1トンくらいあった。ちなみに現用のものだと6トンくらい。
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ここで空母始まったな、と空母がかつての戦艦の位置を占めたかと思いきや、原子力機関を得て食い物と乗組員の正気が続く限り航行できるようになった潜水艦が幅を利かせはじめる。その隠密性と高速を活かして対艦攻撃に威力を発揮するほか、大陸間弾道弾や巡航ミサイルを積んで敵領土の奥深く(場合によっては航空機で攻撃できないところまでも攻撃できる)原子力潜水艦は、空母と主力艦の座を分け合っている。原子力推進でない潜水艦も隠密性が高いのでそれなりに脅威で、現代の水上艦艇の主敵は航空機と潜水艦だと言える
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ちなみに、航空機による対艦兵装(爆弾→ミサイル)がどんどん大型化していったため、装甲でこれを防ごうとするの現実的でなくなり、ならいっそセンサーや対空兵装に重量とスペースを振り分けて、航空攻撃に当たらないようにしたほうが賢いよね、というのが主流になりまして、現代の水上艦艇の装甲は極めて限定にしか施されてません。せいぜい主要部が歩兵用の火器やミサイルの破片にある程度耐えるくらい。アメリカ空母は別。

陸もな……

陣地or陣形+槍+弓で騎兵が防げるかっていう紀元前からのせめぎ合いで、砲の進化は陣地と陣形(散兵)に影響を与えたような。

*1:口径が統一されていると弾道も同じなので狙いも付けやすい

*2:比喩的には