『ファイブ・デイズ・ウォー [DVD]』観た

こう、最近『ハチクロ』『時かけ』『the有頂天ホテル』のDVDと「きちんとしたいい話」ばかり観てきたので(……『まだまだ危ない刑事』はまあ伝統芸能のようなもんなので除外)、もっとこうタイトというかソリッドな感じがする映画が観たくなりレンタル。
第1次世界大戦で連合国側の最終攻勢の舞台となった、アルゴンヌ地区におけるアメリカ第77歩兵師団第307歩兵連隊(大隊?)の戦いを描いたもの。なおこのアルゴンヌとは彼アルデンヌの南西に位置する。
第307歩兵連隊(大隊?)は目標のシャレヴォー・ミルの森に達するが、左右の友軍部隊の撤退によりドイツ軍の包囲下に陥ってしまう。撤退命令すら届かない重包囲下、第307歩兵連隊(大隊?)とドイツ軍の死闘が始まった。

とまあそれだけの話。ストーリー的な盛り上がりとかない。全編ほぼただこれ戦争の、戦争映画らしい戦争映画。だけれどもかなり良かった。視界の利かない森の中という、凄惨な近距離戦闘が想起しがちな条件下での米独両軍の全力のぶつかり合いを、抑制の利いた描写で描いた傑作だと思う。特に良かった点のひとつは第77師団という部隊の使い方。同師団はニューヨークを衛戍地としているため(劇中には出てこない(まだ制定されてなかったかも))が部隊のシンボルマークは自由の女神像)、隷下の将兵は基本的にニューヨーク在住者である。そのため部隊に貧しい移民出身者が多く、彼らが自らがアメリカ人であることを証明するために闘っている様子が上手く描かれている。またもうひとつ良い点として、敵であるドイツ軍を冷血な悪役にせず、きちんとした敵手としているところも挙げられるだろう。これに職業軍人と予備役軍人の確執、都会出身者の移民と田舎出身の生粋アメリカ人のコミニュケーションが絡んで全編だれず、一気に観られた。
絵の感じは『バンド・オブ・ブラザーズ』にかなり似ていて、彩度を抑えめにしたやや粒子の粗い画質で、リアリティーを増したり、血の赤さを強調したりするときに一役買っている。これもテレビ映画として作られたという話なので、そのため『バンド・オブ・ブラザーズ』と似てくるのかも知れない。

「シャレヴォー・ミルの森も米兵をハンバーガーにしようとしているみたいだったなあ」と思ったら、脚本が『ハンバーガー・ヒル』の人でした。さもありなん。
あと第77師団は第2次世界大戦の時には沖縄戦に参加しているので運の悪い部隊だと思いました。

ファイブ・デイズ・ウォー [DVD]

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